アンナプルナ山域の北側にあるヒンドゥー教の聖地、ムクティナート。この地の周りにはチベット仏教とともに栄えてきた大小さまざまな村が点在している。

小豆色の漆喰によって築かれた大きなチベット寺院を中心に、貴重な木材を天日干しするマッチ箱のような家々。どの家の屋根には災いから守るように5色の旗(タルチョー)が掲げられ、乾いた風に靡いている。

ムクティナートに赴く巡礼者が利用するバスの発着所から、一本の寂れた交易路が緩やかに延びている。振り返れば、ムクティナートの中心地、ラニポワの集落が望める。

いくつかの峠を越えると、突然目の前は開け、ダウラギリ山群の主峰と大きな稜線をカリガンダキ渓谷に下ろすトゥクチェピークが目に飛び込んでくる。

峠には石積みがされ、たくさんの5色の旗が飾られている。トレイルはここで2股に分かれ、気持ち良い草地に一気に下る右側のルートを通っていく。

100m以上の岩壁が続く回廊のような河原道

岩肌にはかつて海底の砂地だった波跡が残っている

ムクティナート・ヒマールの未踏峰の6000m峰を源頭部とする川にかかる大きなつり橋を越え、干上がった河原の端を通り、ルブラ村へ向かう。ここには15軒の民家が脆い土地にへばりつく様にして建っている。

 

 

村の入口にあるボン教の建造物

隣家と隙間なく建てられたルブラの村

この村には800年以上もの歴史があるボン教の寺があり、この地に初めてやってきたチベットから僧が植えたと言われるヤナギの大木が村の御神体として、大切に育てられている。

河原を挟んだ崩れやすい岩肌にはグファと呼ばれる洞窟が掘られ、修行僧の瞑想場所として使われていたという。

崩れやすい岩道を登ると、風景は一変し、神聖なる世界に誘われた感じに。

お経を1度読むたびに指で擦って文字を刻んできた。はっきりと凹凸を感じられるまで擦られていた