奇跡のラマとの出会いによって、いろんな不思議なことが起こりはじめた・・・

800年以上の昔に建立されたディラプクゴンパ【カギュ派】

カイラス山の北壁面を真正面にし、5800m級の背後の岩山にへばり付く様に建立され、チベット人巡礼者の心の拠り所として守られてきたたディラプクゴンパは西暦1200年の初めに創られたという。 チベットの勢力図が変わるたびに、その時勢を乗り切ってきたが、中国全土に広がった文化革命はこの寺に悲しい傷跡を残した。 しかし寄進者のお布施によって壊された数々の壁画や仏塔は少しずつ修復され、当時の様子を取り戻せる状態になった。

多くの僧侶と修行僧が長期にわたり生活を送るディラプクゴンパは、この地域最大の寺院として、その役割を果たしてきたのが伺える。

ディラプクゴンパには数々の価値のある仏像が祀られ、巡礼者にとっては散策感覚で足を運ぶにはちょうど良い場所であり、宗教に隔てなく快く受け入れてくれる寛大な寺院だ。

 

荘厳なディラプクゴンパに足を踏み入れる

正面の階段を真ん中にして左右対称の建物。辺り一面、張り詰めた空気が漂っている。 バター灯りだけの薄暗い建物の中には数百年前と変わらず仏像が所せましに鎮座し、壁側には素晴らしい曼荼羅の世界が描かれているので思わず魅入ってしまう。

脇の狭い階段を登ったところには・・・ 極彩色豊かな曼荼羅が壁面全体に描かれ、その横に小さな入り口がある。 中らからお経を唱える声が聞こえてきたので、覗いてみた。

そこには何日もこの場所を離れず、瞑想し続けているラマ僧がいた。

バター灯だけの小さな灯りを頼りに、狭い洞にただ一人祈り続けるラマ僧

彼のお経の邪魔をしないよう、静かに手を合わせることだけにしたのだが・・・私たちが洞に入ってきたときの空気の流れの乱れによって、彼は眼を大きく開き、こちらに来るように手招き。 彼の好意に従い、近づくと、参加者一人一人の頭に優しく手を差し伸べ、有難いお経を唱える。

 

ディラプクゴンパに語り継がれる伝説

1200年代、高僧であるゴツァンパがカイラス巡礼でこの地を訪れた際、突然大雨になり困っていると・・・メスのヤクがどこからともなく現れ、ゴツァンパを洞窟に案内したことがきっかけで、洞窟のある場所にディラプクゴンパを開いたという。

 

ディラプクゴンパに修行する僧が奏でる音の出場所をもとめ、辿り着くと・・・3人のラマ僧がお釈迦様にお祈りを捧げていた。

来門者を祝福する聖水(香料が入った黄色い聖水)を頭からかけてもらい、幸運が授かるよう祈った。貴重な聖水をペットボトルにも分けてもらった。

カイラス山を望めるテラスに出てみると、大きく立ちはだかる神の山が聳え神の存在を信じる心境に至る。 ただただ時間が過ぎていく。

洞で瞑想していたラマ僧が突然現れ、私たちに気づくと腰をゆっくりと下ろし、お経を唱え始めた。

日本から持参した大切なモノ一つ一つをラマ僧の前に差し出し、魂を入れてもらう。ラマ僧が小さな太鼓と鈴を奏でながらカイラスに響く様にお経を唱えていく。

無事、経が終わり丁重にお礼を伝えた。 5000mを越える世界の中で、今まで重たく感じていた体が空気の様に軽くなり、スタッフが待つ宿泊場所まで足軽に戻った。  この場で出会った僧が行く先々で、信じられないシチュエーションのなかで何度も出会うことになるとは、誰も想像することはできなかった。