世界でも最も美しい谷の一つとして称されるネパール・ランタン渓谷。
可憐な高山植物の宝庫としても知られ、チベット医学を学んだ高僧がこの谷で薬草を採りに精を出す。
固有種も多いため、重要な研究フィールドとして多くの研究者をこの地に惹きつけさせる。

ヒマラヤ山脈を南北に縦断するボテ川(チベットを別名ボテと呼ぶ)によって、ネパールのヒマラヤは地理学的に8つに分類される。
その中でも比較的小さい部類に入るのがネパール・ランタン山群である。
端麗な容姿のランタンリルン峰を筆頭に、無数の7000~6000m級の山々で囲まれた、幅1km、長さ20数キロにわたって東西に延びる渓谷は、千メートル以上の断崖絶壁が続くU字渓谷が特徴だ。

(左)ランタンリルンを振り返る 遥か眼下にはキャンジンゴンパ(3800m)の集落が望める 稜線の向こうはチベット

峰々の頂に降った雪が何万年物年月を重ね、大氷河となりヒマラヤの頑丈な岩盤をゆっくりと削りながら渓谷を創り上げた。
その頭上には蒼いキャンバスを背景に神々しいヒマラヤが聳えている。
見る者を一瞬で圧倒させてしまうランタン渓谷はカトマンズの北40㎞にある。

ランタン渓谷からヒマラヤの両サイドがナイフリッジになった岩稜と氷河を越え、カトマンズに最短で抜けるトレッキングルートがある。
シャブルベンシ村からの車道ができるまでは、このルートが一番早くカトマンズに行ける道として利用されてきた。

 

モンスーンにあたる6月~9月前半は、400種類を超える様々な高山植物が一斉に咲き出し、U字谷すべてをいろんな色の花で織り込まれた絨毯で埋めつくされる。
もっともヒマラヤが美しい時期を迎える。

春と秋のトレッキングシーズンになると、渓谷の入り口であるシャブルベンシ村(1400m)からランタン渓谷沿いに遡るトレッカーで大変賑わうのはいうまでもない。
標高差2400mを最短3日間で歩き通し、最奥の村キャンジンゴンパに至ることができる。

ガンジャラ峠を目指し、標高4700m付近を歩く 背後はランタンリルン峰

ランタン渓谷と日本人の関わりを見てみると、他のエリアに比べ入域が遅かったのが伺える。
日本人で最初にランタン渓谷に入ったのは1960年代の事。
日本百名山の生みの親、深田久弥氏とその仲間である。
当時、山同定が不確定だったシシャパンマ峰(8013m)を確認するため、わずかな情報をもとに、カトマンズから真北に進み、ヘランブーの緑豊かな大地を歩き、岩峰の連続であるガンジャラ峠を越えてランタン渓谷に入ったという。

➡ 続く・・・

ヒマラヤトレッキング・登山専門 サパナ

浅原明男