~ムスタン王国トレッキング①~

ネパールのほぼ中央、ネパールヒマラヤで最も大きな山域の一つであるアンナプルナ連峰の北に、「チベット文化」がどこよりも色濃く残るムスタン王国(ジグメーパルバル・ビスタ藩主:25代目在位中、2008年7月に藩主制廃止)があった。 ちなみにヒマラヤに一度でも訪れたことのある者なら、その名を聞いたことがあるだろう。

長年にわたり、外国人立ち入り禁止を行ってきたため「禁断の王国」とも称され、チベットの伝統や文化が破壊されずに原型をとどめている。 特に1951年にチベットが中国の軍事侵略を受け併合され中国化されると、ムスタンは「チベットの外のチベット」「古き良きチベット」として知られるようになった。

ムスタン王国には約9,000人が暮らし、住民はチベットのロッパ族(チベット語で「南の人」の意味)である。

ヒマラヤの遅い春、インド洋から湿った風に誘われ・・・
アンナプルナ連峰、ダウラギリ連峰の白き峰々の頂を一気に越えると、眼下には赤茶けた岩と土がむき出た非常に乾燥した大地が現れ、チベットの国境まで延々と続く。 周りを囲むように聳える峰々は幾重にも連なり外敵からムスタン王国を守ってきた。
街の四隅には寺院が建立され、その真ん中に王の住処が築かれ、王(神)を守るようにして、チベット独特な建築様式であるマッチ箱の様な住居が建並んでいる。 空から眺めると街全体が巨大な曼荼羅の世界になっている。

 

ジグメーパルバル・ビスタ藩主の後継者(Jigme Singi Parwal Bista)との出会い】

2015年初夏、ネパールで起きた巨大地震の支援で訪れていた際、カトマンズ市内にある避寒の館で、知人を通じて王様(皇太子=Jigme Singi Parwal Bista)と出会うことになった。


係りの者を通じて応接間に通され、ネパール語と英語での歓談をきっかけに、私たちがムスタンに来た際に、いろいろと王家に伝わる秘宝、数百年前から大切に守ってきた貴重なチベット文化の粋をゆっくりと見せてくれると言ってくれ、ムスタンへ訪れる機会に・・・・

ちなみにムスタン王国へのトレッキングは、王国がチベット(中国)と接していてるため政治的に微妙な地域なため、ネパール政府から特別許可書など、いくつかの条件を満たさないと許可されないので注意が必要である。

【1000年の時を超える仏教美術の極み】

当時、チベット中央部で確立された仏教:サキャ派がこの地にも広がり、11世紀頃までに建立された寺院がムスタン王国内には点在している。 岩を刳り貫いて作られた寺院、日干し煉瓦を重ねて建てられた寺院等、多種多様の寺院が非常に素晴らしい状態で現存している。 信仰心厚き寄進者たちの善意によって仏教画は細部に至るまで装飾が施され、チベット仏教芸術の粋が随所に見られる。

そして旅は始まった・・・

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