聖山カイラスからほど近い場所に、チベット人がこぞって押し寄せる聖地がある。 外国人旅行者の中ではあまり知られていないが、チベット人巡礼者にとってカイラス、マルサルワール湖に匹敵するティルタプリという聖地。3か所の聖地すべてに訪れ、神を拝むことでチベット巡礼が完結するという。
カイラス山とマルサルワール湖の巡礼を終えた後、ティルタプリへ向かった。 車で1時間強の距離にある門士(メンシ)の街から幹線道路を離れ、10キロの距離にあるティルタプリを目指す。
ここ一帯は、ティルタプリ・ツァンポ(イラワジ川の源流部)にあたり、砂沙漠と岩沙漠が広がる不毛な一帯。 特に砂岩でできている丘が見えてくると、集落の背後に立派なティルタプリ寺院(ゲルク派)がある。 ティルタプリとはインド人の間で『巡礼の街』と言われている。
チベットの神様とし崇められるグルリンポチェがこの地で修行したことが所以となり、ドゥク派によって建立されたという。 現在、ゲルク派の寺院として13名の僧侶が2つのラカン(お堂)を中心に、中国政府の保護を受けながら大切にお寺を守っている。※ 2019年6月現在 ※ ドゥク派:12世紀頃、カギュ派から分かれた支派。西チベット地区のみで広がる
このお寺の本尊(グルリンポチェ)が祀られている左側の大きなラカンに向かうには、境内の大きな広場を横切ることから始まる。 グルリンポチェがこの地で修行していた時、突然天から巨大な岩が降って来たという。 その時の岩が広場に大切に飾られ、信者は額を岩にくっつけて祈りを捧げる。※ グルリンポチェ:8世紀、ニンマ派の開祖したインド人。ニンマ派は出家しないで修行する者が多く、隠された教えを啓示によって発見する『埋蔵経典』というシステムなどがあり、神秘色が強い
中印国境が閉ざされるまでは、ラダック(インド)のへミスゴンパの傘下にあったという。 現在の寺院は1980年代に再建され、西チベット3大聖地のひとつとなっている。
【ティルタプリの見どころ:】
●トポ・モポ(温泉)
ティルタプリの村に入り口に温泉が湧いている。 かつては平原に湧き出し、あたりに硫黄の香りを漂わせながらティルタプリ・ツァンポに注いでいたが、現在は源泉が建物中にあり、直接見ることはできない。 建物の横から延びる排水溝からは蒸気が吹き出し、勢いよく流れる温泉を見ることができる。 熱すぎて触ることができないが温泉に含まれる成分が沈殿し、真っ白な石の様なモノが付着している。
●シンドゥラー(寺院背後の丘)と鳥葬場
ティルタプリ寺院の背後は高度差にして、50mほどの緩やかな丘が広がっている。 風が吹き抜けるここには無数のタルチョー(祈願の5色旗)がはためき、巡礼者の祈りの場となってきた。 その先にある塀で囲まれた場所には整備された鳥葬場があり、だれもが気軽にその場に訪れることができる。
●ティルタプリ・ゴンパ (※内部は撮影厳禁)
ラカン(お堂)の中は、18ハカン(18人のお坊さん)の絵が4方面に大きく美しく描かれ、他のお寺に描かれるタンカなどの絵とは大きく異なっている。 左奥に祀られているご本尊のグルリンポチェ(パドマ・サンババ)は岩をくり抜いたチョルテン(仏塔)の中で大切に祀られているのは必見。 それ以外にもいくつもの仏像が安置され、右端に安置されている千手観音菩薩像も必見。
サキャムニ像(仏陀)の前にある聖なる石(足首の形)に触れると、痛いところが治るという。
広場に祀られている大岩に頭をつけてお祈りすることで、無病息災などあらゆる願いが叶う
●洞窟群とチョルテン(仏塔)
チベット教と言えば、経文が刻まれたマニ石を想像する人も多いだろう。 数百年前のモノから、今なお信者から寄進されて行くモノなど、たくさんのマニ石が置かれている。 白いチョルテン群(仏塔)もいろんなところに点在し、あたり一面神秘的な空間を醸し出している。 砂岩の斜面には無数の洞が掘られ、僧の瞑想場所になっていたという。
●岩窟ラカン(お堂)
村の外れ(温泉近く)には無名のラカンがぽつんと佇んでいる。 中には尼僧が一人、ご本尊に向かって祈りを捧げていた。 ラカンの撮影を快く許してくれたため、撮影できた。
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