ガンジャラBCとなった草地のキャンプ地(4000m)から背後の斜面に延びるトレイルを一気に登り、HCP(ハイキャンプ:4800m)を目指す。
呼吸が乱れないよう、ゆっくりとマイペースで登り、高山病へのリスクを減らすことに努めたいところだ。

高度差にして300m、ガレ場の苦しい登りが終わると真っ白な氷河を抱く、ナヤカンガ峰(5844m)が太陽の光に照らされ輝いているのが見える。
ナヤカンガ峰の東稜線から流れ出す氷河に沿って延びるトレイルには、地元民が道しるべに置いたケルンが積まれ、ガンジャラ峠まで続いている。

ガンジャラHCPから望むナヤカンガピーク峰

傾斜は徐々に緩くなり水平道のように歩きやすくなる。 砂地の広いスペースはナヤカンガ峰を目指す隊やガンジャラ峠を越える隊がテントが張る場所でガンジャラHCPと呼ばれる。 ナヤカンガBCはここからトラバースをした先にある氷河末端だ。

 

氷河の脇に沿って続いていたトレイルは吸い込まれるようにして氷河の中に延び、不明瞭なトレイルに変わる。 トレイルを探しながら氷河の中でアップダウンを何度も繰り返しながら峠に向かって進む。 前方にガンジャラ峠の稜線の壁が見えてくると、左岸のモレーンをよじ登る道に変わる。 氷河によって削られた大岩がゴロゴロした間をよじ登る。 所々に積まれたケルンを辿りながら先を進む。 標高5000mを超える中での登りでは息が荒くなり、思うよう足が前に出ない。 荒い呼吸によって体全体から水分が抜け体の消耗が激しいため、こまめに水分を取らなければならない。

ガンジャラ峠直下の岩陵帯をよじ登る

峠の岩稜線が真正面になると、ザレ場と岩場の急峻なルートの連続。
カトマンズから持参してきた50mロープを大岩に括り付け、ポーターが安全に通過できるようルート工作。 全員が登り切ったところでいったんロープを取り外し、再び岩場のトラバース道に縛り、慎重に横切って行く。
足元の幅30㎝、50mほど深く切り立つ岩場のトレイルが20mほど続く。 恐る恐る来た道を振り返れば、標高8012mのシシャパンマ峰を筆頭にランタン山群の峰々が雲の上に突き出し、ガンジャラ峠からの最高なパノラマを独り占めできる。

ランタン山群とカトマンズを繋ぐ生活道ガンジャラ峠(5100m)

国境上に連なるランタン山群、最奥(中央)のドーム型の山がシシャパンマ峰(8012m)

ガンジャラ峠(5110m)に立つ!

幅2mほどしかないナイフリッジの岩頂上を跨ぐ。 再び一気に100mほどザレ場を下る。 ナヤカンガ峰の南壁から流れ出す氷河がトレイルの下に潜るように延び、足元が非常に不安である。

60年前、日本百名山の生みの親、深田久弥は仲間と一緒にカトマンズ盆地からキャラバンをスタートし、緑豊かなヘランブー地域からガンジャラ峠を越え、ランタン渓谷に抜けた。

峠から急なザラ場を300mほど下り、やっと傾斜が緩くなると、氷河の伏流水が所々からわき出した牧草地(カルカ)が延々と続いている。 振り返れば、ランタン山群から東へ延びるジュガール、ロールワリン山群の6000峰々そそり立っている。

ガンジャラパス南側はタルケギャンの村のカルカ(放牧地)が点在、トレイルは非常に整備され迷うことはない。

ナヤカンガ峰南壁の懸垂氷河、下部は土砂の中に隠れてしまっている

先を歩くスタッフが小川の横に広がる大きな草地にテントを張り、温かい食事を作っていた。

冷え切った体が温まるように、熱々のおでんを用意してくれた

ヒマラヤの頂が残照によって赤く染まる中、早めにスタッフが準備してくれた湯たんぽに誘われるようにして、寝袋に滑り込んだ。

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